6 戦争の放棄 (あたらしい憲法のはなし p17)
みなさんの中には、今度の戦争に、おとうさんやにいさんを送りだされた人も多いでしょう。ごぶじにおかえりになったでしょうか。それともとうとうおかえりにならなかったでしょうか。また、くうしゅうで、家やうちの人をなくされた人も多いでしょう。いまやっと戦争はおわりました。二度とこんなおそろしい、かなしい思いをたくないと思いませんか。こんな戦争をして、日本の国はどんな利益があったでしょうか。
何もありません。ただおそろしい、かなしいことが、たくさんおこっただけではありませんか。
戦争は人間をほろぼすことです。世の中のよいものをこわすことです。だから、今度の戦争を仕掛けた國(くに)には、大きな責任があるといわなければなりません。この前の世界戦争のあとでも、もう戦争は二度とやるまいと、多くの國々ではいいろいろ考えましたが、またこんな大戦争をおこしてしまったのは、まことに残念なことではありませんか。
そこで、今度の憲法では、日本の國が、けっして二度と戦争をしないように、二つのことをきめました。その一つは、兵隊も軍艦も飛行機も、およそ戦争をするためのものはいっさい、もたないということです。これからさき日本には、陸軍も海軍も空軍もないのです。これを戦力の放棄といいます。「放棄」とは、すててしまうということです。これを「戦力の放棄」といいます。しかしみなさんは、けっして心ぼそく思うことはありません。日本はただしいことをほかの國よりもさきに行ったのです。
世の中に正しいことぐらい強いものはありません。
もう一つは、よその國と争いごとが起こったとき、けっして戦争によって、相手をまかして、じぶんのいいぶんをとおそうとしないということをきめたのです。
穏やかにそうだんして、きまりをつけようというのです。なぜならば、いくさをしかけることは、けっきょく、自分の國をほろぼすようなはめになるからです。また、戦争とまでゆかずとも、國の力で、相手をおどかすようなことは、いっさいしないことを決めたのです。これを戦争の放棄というのです。そうしてよその國となかよくして、世界中の國が、よい友だちになってくれるようにすれば、日本の國は、さかえてゆけるのです。
みなさん、あのおそろしい戦争が、二度とおこらないように、また戦争を二度とおこさないにようにいたしましょう。